[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.030 うさぎを殺め、亀へと成り上がる

「モテる男、魔性の女に、早口の人はいない」

 

ゆっくり動けば人生が変わる / 小林弘幸

 

 私が敬愛する小林弘幸先生の著書より引用させていただきました。この本はわたしの価値観に多大な影響を与えた一冊となっており、何度読み返したことかわかりません。引用文から察するに「モテ本?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは自律神経に関する一冊となっています。著者の小林弘幸さんは、[順天堂大学医学部教授であり、自律神経研究の第一人者としてプロスポーツ選手、アーティスト等にコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わっている]、このようなお方です[※Wikipediaより抜粋]。要するに自律神経のスペシャリストという訳ですね。ここで自律神経について素人ながら簡潔に説明させていただきます。自律神経とは、交感神経と副交感神経の2つから成り立つもので、車で例えると交感神経はアクセル、副交感神経がブレーキの役割をしています。活動が盛んな午前中は交感神経が優位であり、そこから夜にかけて段々と副交感神経が優位になっていきます。交感神経が優位な時はいわば興奮している状態で、副交感神経が優位な時がリラックスしている状態となります。アクセルとブレーキ、正反対の性質を併せ持つ自律神経が、起きている間は勿論のこと、寝ている間も休むことなく私たちの中で働き続けてくれているんですね。ちなみに男性の勃起は副交感神経が優位な状態で起こり、交感神経が優位な状態で射精が完了します。「あれ、おかしい、なんで、駄目だ」なんて時には男性側が緊張している=交感神経が優位だから勃たない、ということが一つの要因として考えられます。決して女性側に魅力を感じていない訳ではありません。逆に緊張するぐらいあなたが魅力的だということなんです。と、すぐに下ネタへ走ってしまうように見せかけて、今回に関しては至って真面目なわたしです。

 

 小林先生いわく、現代人は交感神経優位な人が多いようです。理由としては生活上のストレスやインターネットの普及によるものが一因として考えられます。ちなみにスマホやパソコンの画面から放出されているブルーライトを眼球に浴びるだけでも交感神経を刺激するそうです。基本的に夜~就寝前にかけては副交感神経が優位=リラックスした状態であるとスムーズに入眠することが出来ます。しかし、ディスプレイから放たれるブルーライトを浴びてしまうと交感神経が優位になり興奮状態となります。また、ブルーライトは紫外線(太陽)に近い性質をしている為、眼球から浴びると脳が日中と勘違いしてメラトニン(睡眠物質)の生成を止めてしまうそうです。その結果眠れなくなる、眠るまでに時間を要することになってしまう。「就寝の一時間前からはスマホを見ないようにしましょう」と指摘されることがあるのはこの為ですね。「夜中にこの記事を読んで下さっているそこのあなた、現在進行形でメラトニンの放出が阻害されていますよ」なんてことを書くと二度と読んでもらえなくなりそうなので自制します。「そんなこと言ったら、夜間のセックス後に眠くなるのは何故なんだ!興奮状態だったはずなのにおかしいだろ。」といった男の子の声が聞こえてくるような予感がします。これはあくまで男性に限ることですが、男性が射精した後には”プロラクチン”というホルモンが体内で大量に分泌されます。このプロラクチンが男性の性的興奮を急激に減退させ、同時に脱力感や眠気を誘発させる効果を併せもっています。俗に言う賢者タイムというやつですね(ちなみに、この働きは性交でも自慰の場合でも同じです)。これが事後の場合、「賢者タイム最中での女性への対応で男の度量が試される」、なんて世間では言われていますが、プロラクチンの放出量にも個人差があると思うので何とも言えません。男がすぐに眠ってしまって女性が寂しい思いをする気持ちは共感出来ます。すぐにスマホを触る輩は問答無用でそのまま爆発して死んでしまえと思いますけれども。

 

 結局下ネタじゃねぇか、といった声が聞こえてきますが、これだけは真顔で言わせていただきたい、「至って真面目なわたしです(再掲)」。わたし自身、一時期なぞの体調不良に苛まれた時期があり、何件も病院を回っても診断結果は「原因不明」でした。ただ絶望して、日々苦しみに耐えていた覚えがあります。誰にも言えないし、誰かに言っても現状が変わる訳ではないし、そんな感じでもう半ば諦めていました。そんな時に出会った本が「ゆっくり動けば人生が変わる」という小林先生の著書でした。ページ数も文字数も少なく、内容もシンプルでスラスラと読み進めることが出来た。そこで自律神経失調症という言葉の意味を理解しました。言葉は知っていたけれど、意味を理解できてはいなかった。これをきっかけに他の自律神経に関する書籍や文献を読み、出来る範囲で自分の生活に行動を落とし込んでいきました。上述した通り、現代人は交感神経が優位になりがちなので、副交感神経を高める必要がある。副交感神経を高める方法は色々ありますが、その中でも特に効果的なものが「ゆっくり動く」ことです。ゆっくり話す、ゆっくり歩く、ゆっくり食べる、ゆっくり字を書く、等々さまざまな事をゆっくりとやってみる。ゆっくり動くと呼吸の速度も自然とゆっくりになる為、結果的に副交感神経が高まります。「それならゆっくり動かなくても、呼吸の速度をゆっくりにすればいいじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、自らの呼吸を意識した時点で自律神経のバランスは崩れてしまうそうです。繊細過ぎてなんだか笑ってしまいますよね。あくまでゆっくりと動く事がコツだそうです。

 

 そして、話は冒頭の引用文へと繋がります。「モテる男、魔性の女に、早口の人はいない」というのは、要約すると”魅力的な人に早口な人はいない”ということになります。芸能人に疎い自分が思いつく限りで申し訳ないのですが、男性で言えば「斎藤工さん」、女性で言えば「椎名林檎さん」となります。何だかとんでもなく色っぽいお二方が登場しましたが、お二方どちらの話し口調もとてもゆったりとしておられます。この”ゆっくり”は=色気でもあります(色気について記述すると膨大な文字数となってしまう為、また別記事で語らせていただきます)。そして、ゆっくり=余裕でもあるのです。心に余裕を感じる方の行動を観察してみると、決してせわしなく動いたりしていません。ゆっくりと、一つ一つの動作を丁寧に行っています。逆に、焦っていたり追い詰められている時には、すべての行動が早くなっていることに気がつきます。常日頃から”ゆっくり”を心掛けている自分ですが、未だに焦っている瞬間には全ての動作が忙しないものとなっています。そんな時には、気が付いた段階で意識的に行動速度をゆっくりへと変更する。人間は「感情があり→行動をする」ではなく、「行動する→感情が生まれる」なので、意識的にゆっくり動くことで必然的に心が落ち着きを取り戻します。仕事中は難しい場合もあるかもしれませんが、それでもゆっくりと余裕を持って取り組んでいきたいものです。

 

 また、これは作中では紹介されていませんが、[ゆっくり動く=生物学的強者]という方式も存在しています。これは動物界を見れば一目瞭然なのですが、基本的に力が強い生物ほど動きがゆっくりです(ライオン、ゾウ、キリン、カバ、ゴリラ...etc)/(亀やナマケモノのような方式に当てはまらない存在もいます)。逆に、小さく非力な生き物ほど動きが早くて活発です。要するに、意識的に動きをゆっくりにすれば大きい存在として錯覚させることも出来るという訳です。生物学上でいえば、より子孫を多く残すことが出来る=強い個体が異性を獲得します=モテます。逆に、コソコソと素早い動きを繰り出す個体に対して、なぜか人間は恐怖を感じます。それは、次にどんな行動を繰り出すか予測することが難しいからなのでしょうか。そういった視点で世の中を観察すると、また変わった景色が広がるのでオススメです。

 

 この本と出合ってから自律神経が好きになりました。より広い視点から捉えればこれはフェチシズムとして割り当てられると思います。他にも栄養素や人間が分泌するホルモンや脳内物質に関しても興味関心があり、そういったことを誰かと話し合いたいと思っています。しかし、その分野がマニアックであればあるほどに、それを話すことが出来る相手が限られる。その結果、学び始めて数年が経ったけれども、上述した分野のことを深い部分まで話したことがない。まぁ、それはそれでいいやと思っているけれど、「いつか誰かと話しが出来ればいいな」と思い抱き、今日をわたしは生きています。

 

※もし、この記事を読んでいただいて少しでも自律神経について知りたいと思っていただいた方がいればわたしに連絡を下さい。小林先生の著作をお送りいたします。

 

 

「わたしは誰かと話しがしたい。たとえそれが意味のないことだとしても。」