[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0231 病みの中にある幸福論

 

 一か月ほど前まではもう勘弁してくれよと思うぐらいには心が蝕まれていた。

 

 現在は心を病んでいるというよりも”ずっと考え続けている”といった感じで、適度に脳が疲労していて心地が良い。夜もよく眠れるようになった。自分でも何故だかわからないけど、唯一心当たりがあるとすれば、家の中で一人酒をしなくなったことが大きく影響しているのかもしれない。

 

 仕事以外の時間はずっとお酒を飲んでた。いつもいつも酩酊していた。誰かと会っている時も抱き合っている時も泣いている時も。一体僕はいつまで酔い続けるんだろうと思いながら、迫りくる現実の重圧に耐えきれなくて気がつけば片手にストロング缶を握りしめ、次の瞬間には中身が体内へと消えている。

 

 身も心も部屋の中もほとんどグチャグチャに崩れていたけれど、人間関係だけは何とか形を保ってくれた。いくら飲んで潰れて沈んでいっても、周囲の方たちはその姿を見守ってくれた。誰一人として私を抑制する者はいなかった。ただひたすらに呆れられていたのかもしれない。それでもわたしは嬉しかった。たまたま運が良かったとしか言いようがない程に、私は幾度となく温もりに救われ続けた。

 

 もう全部やめてしまおうと思った、ただ今日を生き延びることだけを考えていました。色々なことを諦めてしまえば、幾らか心が軽くなる。一つ、また一つと願望を置き去りにして進む。重い荷物を次々と手放していく。それでも捨てきれなかった願いだけが、本当に望んでいたことなのだろう。いくら歩みを進めても、書くことだけは諦めきれなかった。一寸の成果さえ上がらない文体でも、書いている間だけは夢中になれた。足早に時間が過ぎ去って行く、その感覚を愛していた。だから、いかなる形であれども私は書く。最早それだけを続ける覚悟で"あと一日だけ"を何度だって繰り返す。骸になれば言葉は紡げない。だからあともう少しだけ、皮膚を纏ったまま筆を握りしめる所存です。

 

 冷静な頭で冷静でなかった時のことを考えると、如何に自分が愚かな人間だったのかが露わになる。それも含めての『自分』でしょう?それでもやっぱり恥ずかしさと申し訳無さが入り乱れるよ。これからどんな顔をして生きていこう。出来ることなら冷ました顔をして風を切りながら歩いていたい。苦虫を噛み潰してばかりいると、表情が凝り固まってしまうから。脱力しながら、何の意味もなく、ゆっくりと終わりを目指したい。

 

 過去と現在の分別をつけながら、未来などありもしないと錯覚しながら。