[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0172 インフルエンス、嘲笑

 

 様々な方法でわたし達の目的を忘却させようとする世の中の流れ。

 

 さほど欲しくない物を欲しいと思わされたり、人との浅はかな繋がりだったり家族(笑)の大切さを電波に乗せて美談だけを切り取る。それらを手に入れていない者は自動的に劣等感を植え付けられ、日々欠かさず情報の雨を降らしその根を深くまで張り巡らせる。

 

 何やってんだ、ってたまに思う時がある。アホみたいにつまらない地上波放送、見ても見なくても何も変わらないYoutube動画、己の愚かさを隠すことに特化したインスタグラマー、シンプルに寿命と語彙力を剝奪する話題のゲームソフト、その何もかもが目障りに感じてスマートフォンだったりノートパソコンだったりを押入れに投げ込んで心に蓋をしてしまう。そうすることによって、少しだけ落ち着いてくる。みんなが夢中になっていることに、自分も感心を向けなければならないなんて幻想だ。

 

 このまま周りに誰もいないような世界で一人静かに暮らしたいと思う。紙に印字された文字列があれば私はそれで充分だと思えるし、その緩やかな時の中で緩やかに甘い自殺を進めたい。笑顔や泣き顔を誰にも見られることなく、わたしは私自身を忘れてしまいたい。

 

 そんな妄想を開始する頃には自分の本当にやりたいことが頭の中に浮かび上がっていて、まだ忘れ切っていなかったことに安堵する。読んで、書く、ただそれだけのことを世の中の濁流が廃棄物と一緒に絡め取っていく。こうなってしまっては世の中そのものが哀れだ。その中に存在している自分自身も、例外ではない。

 

 忘れそうになっては思い出して、また外に出れば少しずつ喪失する。そうやって本当に大切なことに集中させまいと躍起になる世界構造そのものが悲しい。もう放っておいてくれ、わたしの答えが間違っていてもそれで構わない。たくさんの過ちの隙間を潜り抜けて、誰もいない場所へと飛び出せることを静かに願う。

 

 

 今日もまた一ページ、言葉の音が空に響く。