[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0154 雨を想えば

 

 いついかなる時も不安はわたしの側を離れないでいて、消えゆく眼前の光に絶望している。ずっとそこに居座り続ける、その姿は最早わたしよりも私らしいのではないかしら。

 

 気が付けば存在していた、いつの間にか住み着いていた。不安こそが何よりも私をかき乱す。一番性質の悪い恐怖の派生かもしれない。これさえなければ、お前さえいなければって何度も何度も考えて思い詰めたけど、そんなことお構いなしに頬杖をつき口笛を吹くお前。「不安感情って現在ではなく過去や未来に対して抱くものなんだよ」うるさい、そんなこと言われなくても分かってる。理解した上で不安になってる、お前に論理が通用しないことも痛いほど理解してる。

 

 決まって夜に話しかけてきたのに、その話し声が日中にも頻発するようになり、終いには目覚めた直後にも圧し掛かるようになった。もうやめて、性悪なアラーム音はいつまで経っても鳴り止まなくて。あゝ、困ったな。泣いても誰も助けてはくれない。当たり前だ、不安は自分の中に在るものであって、他人はその姿を捉えることが出来ない。そもそもの話、わたし自信が助けを求めようとしていない。

 

 助けを求めることさえ大きな不安になるんだ。心が揺れる、その振動で吐気を催す。そうやって一人でうずくまって、どこまでも排他的になっていく。早朝にカラスが鳴く、隣人が鳴く、呼応するようにわたしも泣いている。今日を放棄してしまいたいけれど、本当に動けなくなる予感がするから脳を振り絞り身支度をする。朝日が眼球を刺す、またもやぶり返す吐気と失われる体温。いつまでこれが続くのだろう、そのことに対しても不安の熱が沸騰する。不安が更なる不安を呼び起こす、そうやって身体全体が不安の渦に飲み込まれてしまって、わたし自身が”不安”そのものと化してしまうのだろうか。

 

 

 ”不安を完全になくす事はできない”という言葉を耳にした。完膚無きまでに盲点だった。誰にだって少なからず不安感情はあるんだ、そのことを私は忘却していた。不安を無くそうと躍起になるから、不安がどんどん膨張していく。抗おうとするから、反発して大きくなろうとする。もういっそのこと、諦めてしまえ。不安なことは仕方がない、多分君は人一倍世の中に対して敏感なだけなんだ。恐れることは仕方がない、それでも眼前の恐怖から目を逸らさないで。しっかりと焦点を合わせて、正面から見据えてみよう。不安はそのままにしておけばいい。心の中から消すことは出来ないのだから、好き勝手にさせてあげればいい。不安は構えば構うほどに要求が激しくなる。奔放とするその姿を傍観するぐらいが丁度良い。時にはわたしの首を絞めようとしたり、心臓を握り潰そうとするかもしれない。それでも反応しないで、ただ時が過ぎるのを待つことが大事。死ぬまで付きまとう関係性だからこそ、適切な距離感を見極めたい。

 

 あまり深く思いつめないで、もう少しだけ楽観的に生きれたらいいのにね。