[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0464 美しい体温

 

 誰かと話しがしたい。でも、それが誰なのかわからない。彼なのかもしれないし、彼女なのかもしれなくて。はたまたそれが自分自身だったりもする訳で、要するに孤独と沈黙に耐えられなくなっている。会話がしたい、という欲求。もうお酒とかコーヒーとか必要ないから、公園のベンチに腰掛けながら、最近のことを話したい。

 

 自己愛に満ち溢れている、もしくは大きく欠けているかのどちらかで、そんな状態が不安定を招き寄せる。いつも通りの日常が、いつも通りではなくなって、わたしが私ではなくなって、ここにいるのは、この文章を書いているのは、一体誰なのだというのだろう。香りだけは変わらない、と思っていた。あなただけは変わらない、と思っていた。期待。慢心。後悔。あたまの中が靄に覆われていく感覚は、何度味わっても慣れることができないままで。いつまでこんな風にして、世界のことを愛せないのでしょう。もういなくなったと思っていた、鬱はこんなにも早くわたしを抱きしめながら泣いている。

 

 何もない部屋で、空っぽな自分を、そっと抱きしめて。綺麗な手で、濁った心を、優しい力で包み込んで。いつだってそうだった、自分が求めていることは、誰かの温もりであって、自分からの愛情だったのだ。もう、世界の雑音を気にする必要はなくて、歪な美しさ、自分軸でこれからを生きればいい。いまが苦しかったとしても、未来が苦しいとは限らない。そんな期待、淡い、麗らかな灯火。誰に迷惑をかけるでもない人生が嫌だった。保守的な生き方が大嫌いだった。もっともっと、自分。もっともっと、あなた。会話はわたしを輝かせてくれる。ずっと一人きりで話していました。自分がどう在りたいのか、どのような私になりたいのか。向き合うことは時に苦しみを伴う。それでもきっと、変わることができる。そうすることでしか変わることができない。いい風が部屋のなかに流れ込む、心の換気が必要だった。いまこの瞬間に集中する。美しい手、あなたの体温が、わたしの体温が、いまはたくさん欲しいのだ。