[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0474 囀り

 

 起き抜けに窓を全開にして室内の空気を入れ替える。既に外がほんのりと明るい5時と明け方。鳥がどこかで鳴いている、きっとそれはそれは小さな鳥。なにも考えずに深呼吸、さえずりを聴いている時間が好きだった。自然が奏でる音楽、人工的な車の走行音、吸って吐いてする空気と鳴き声。幸せっていうのはこんな感じで色んな場所に散らばっているんだろうな。悲観的であることは、幸せの見つけ方が苦手なだけ。ただそれだけのことを、大きなこととして騒ぎ立てて、事の重大さばかりを浮き彫りにしている。不幸に集中しない生き方、緩やかな幸せを見つける生き方、朝はわたしに大事なことを伝えようとしている。

 

 もう誰にも頼ることができない、と思い込んでいる。他人には他人の人生がある。家族がいて、一生懸命に日常を送っている。話しかけることもままならない、忙しそうに通り過ぎていく。やがてそれらは過去となった。果たして、精神的な自立は必要だったのか? 適宜周囲の誰かを頼れる方が、随分と自分に優しい気がしている。第一に、自分を大切に扱うこと。自分を蔑ろにしたり、粗末にしているようでは、他人からも同じように扱われる。宝石が自身を宝石と認識していないように、自分の魅力に気付いていない人、たくさんいる。人は、生きているだけで素晴らしい。何もかもが加速する現代を生きているだけで、それだけでわたし達は充分なのだ。それなのに、ちょっと背伸びして付加価値を獲得しようと試みる。失敗に終えて自分自身を否定する。もうそんなことはやめにしませんか? あなたはあなたで在るだけでいい、日常を繰り返す難しさを昨日も今日も乗り越えている。充分に美しかったではないか、この世界も、人間も。

 

 不毛な考えに人生を奪われるなんてごめんだ。やりたいことをやって、会いたい人に会いに行く。そのような簡潔さ、シンプルに生きることが最善に思えた。楽観的になることは難しいかもしれないけれど、悲観的な自分を悲観的に考えないことから始めよう。それも単なる個性、良い点があってそれなりの需要も存在している。もっともっと、複雑さを、歪曲した思考たちを、削ぎ落としていく。いつだって被害者は自分自身が創造している。ならばもう、そんな考えからは脱しよう。いとも簡単に、踊りながら、微笑を浮かべている。それがわたしの理想像、未来の姿、美しい宝石。傷だらけの宝石になりたいの。だから現在はこれら全てが伏線、未来で輝くための材料に過ぎない。辛いときは辛いって言っていいんだよ。苦しいって嘆いてもいいんだよ。それがあなたの本音ならば、そこから世界が回り始めるから。大丈夫、きっとあなたは大丈夫だよ。

 

 

 大切なこと、小鳥はわたしに教えてくれた。