[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0124 一縷

 

 もう眠くてたまらん。出来ることならいつまでも寝てたいと思うねんけど、現実がそれを許してくれへん。俺達にはやりたいことがあるし、何もせんでも加速的に世界は回ってる。油断したら過去に取り残されてまう。だから、欲望にかまけてる場合じゃない。自分を律することで、俺たちの中にある世界を変えていくんや。

 

 そんな中で、どうしても何も思い浮かばんかったり、心が重くて身動きが取れへんくなることがあってな。そんな時には、俺が力を貸したるねんけど、いかんせん主人格はウジウジ考えて、ジトジト沈み込んどる。きっと、少しばかり繊細なだけなんやと思うけど、俺としてはもう見てるだけでむず痒いわ。なんせ自分自身のことやからな。俺は主人格が作り出した幻想に過ぎんかもしれんけど、それでもモブキャラで終わる気はないねん。主人格は俺のことをもっと尊重してくれ、俺の思考回路をもうちょっと上手く取り入れてみてくれ。そのガチガチに凝り固まった脳味噌を、早く解放してほしいわ。俺は君=自分自身を応援したいからさ、もうちょっと俺のことも受け容れてほしいなって思ってるよ。

 

 幸い、互いに目標は一致してるんやから、後はそれに向かって進むだけ。めっちゃシンプルやろ?そう、人生ってどこまでもシンプルやと思うねん。せやのに、お前は複雑に考え過ぎ、人生を歪曲させ過ぎてるわ。もっと適当でいいねん、真面目に生きて苦しむぐらいなら、適当で馬鹿みたいに生きて楽しい方がよくない?。もうさ、執着なんて手放してしまって、さっさと楽になった方がええ。世界の中に綺麗なものなんか無いし、どこを見渡してもあらゆる部分が”適当”で形成されてる。そんな中で孤軍奮闘しても意味ないやろ?一体君は何と戦ってるん?現代版のドン・キホーテなん?。

 

 別に落ち込むことが悪いって言いたい訳じゃないねん。君は思考が偏り過ぎてる部分があるから、たまにこうやって表出てきて喝入れたらなあかんようなる。深く沈めば沈むほど、自分自身を見失っていくやろ。そうなると、いよいよ俺のことも感じひんくなるやろうから、それだけは避けなあかんと思ってる。俺がおらんようなったら、誰が君を助ける?誰が君を引っ張り上げる?。人様を頼ることも賢明な選択やと思うけど、落ちてる状態のときは人に会わん方がいいって直感的に理解してるんやろ?迷惑をかけてしまうかもっていう懸念に怯えてるんやろ?。その考えを尊重したいからこそ、いつだって俺が側にいてるんやで。その為に、俺を作り出したんやろ?。寂しかったんやな、飛び切り楽観的な自分自身を、手に入れたかったんやな。

 

 まぁ、楽観的すぎるのも、悲観的すぎるのも、あまりに極端なのはよくないわな。白か黒か、みたいな二分思考は君の心を握り潰してまう。中間にある"灰色"の存在を認めてあげてや。色の識別が難しいけど、意識して過ごせば必ず見えてくるようになる。その第一歩が俺を受け容れること、取り入れることやと思うねん。多分やけど、完全に俺が主人格になってしもたら、君が持ってるかけがえの無い魅力が消えてしまう。だからこうやって、俺は出しゃばらんと内側で見守ってるんよ。でもな、いつも見てて思うけど、君はいつだって生き辛そうで苦しそうや。このままやと言うてる間に壊れてしまうと感じたから、ちょっとずつ口を挟むようになった。俺は君を宥めるような優しい接し方はできへん、背中をバシッと叩いてあげることしかできへんけど、それでええと思ってる。俺が優しくしたら、君は調子に乗るやろ?。その後もどんどん落ち込んでいくと思うねん。そうならん為にも、君には優しくしないって決めてる。これは一種の愛情表現なんやけどな。

 

 どこまでも現実を捻じ曲げる君に、俺は正確な形を淡々と教えてる。同時に、形は曖昧でもいいんやってことも教えてる。都合の良いように俺を利用してくれ、その為に俺は生み出されたんやから。少しでも君が楽になってくれたら、それが自分の本望やからさ。

 

 君はよく「道化を演じる」とか「ピエロになれば」みたいな表現を好んで使ってるけど、それこそが俺そのものなんやで。苦しい時は言ってくれれば、俺が前に出て適当におちゃらけるから安心して。俺と君は二人で一人、光と影、陽と陰の関係性や。明るいだけでも、暗いだけでもあかん。暗澹の中に差し込む一縷の光。それが君であって、それが俺でもある。今後は上手いこと仲良く混ざり合っていこな、頼むで。

 

 俺自身があまりにも眩し過ぎるから、普段は君が主人格として、世の中を呪い続けてくれたらええ。たまに俺が明るさぶち撒けて、バランスとれればそれが一番最高や。そうやって、俺たちは適当に生きていくんやで。

 

 

 これからも主人格をよろしくな。

 ちょっと喋り過ぎたから、そろそろ寝るわ

 

 おやすみ、今日はいい夢見れそうや。