[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0167 白が正しさとは限らない

 

 何となく生きていると、何となく過ぎ去った時間を悔やむことがある。だから一生懸命に”今”を生きなさい、なんて言われるとウンザリしてしまう。確かに後悔は過去の中に閉じ込められているし、不安は未来が産出した不確定要素満載の虚像に過ぎない。大切なのは現在であって、今を生きなければ過去は報われず未来を創造することが出来ずに終わる。

 

 そうであっても、果たして一生懸命に時を重ねる必要があるのだろうか。ただでさえ息が詰まる世の中を、ただでさえ生き辛いわたし達が鈍行ながらも進んでいる。時には進めないこともあるし、濁流に流されスタート地点まで戻される時もある。そんな中でも生命を費やす為に泣きじゃくるわたし達を「もっとキチンと生きなさい」なんて一蹴する俗物こそが全ての愛情を蔑ろにしていると思う。

 

 「生きてるだけで偉いよ」

 

 最近ではよく見聞きする言葉になったけれど、初めてこの言葉に触れた時には心が大きく救われた。自分自身が肯定された気持ちになれた。当たり前の事象として機能しているけれど、生きてるってすごいことなんだ。食物を摂取して、好きな人と会って、たくさん眠ること。その中でわたし達は税金を納めているし、消費者として社会の歯車になっている。それだけで充分に素晴らしい存在なんだ。

 

 

 もう一生懸命に生きることは止めにしませんか?雁字搦めな自分自身からあらゆる手綱を引き千切ってあげませんか?。意図的にしてはいけないけれど、生きているだけで誰も彼もに迷惑をかける。だからこそ、たまには他人の迷惑を受け入れてみませんか?。それでも笑えなくなってしまったら、黒い服を纏って街中を散歩してみませんか?。あなた自身が持つかけがえのない”正しさ”を、時には解放してあげることも大事だと思うんです。もう少しだけ、エゴイスティックに進めたらいいですよね。

 

 

 「今日も空気が美味しい」

 排気ガスで満たされた肺が空虚に言った。