[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0168 夕暮れ時に思うこと

 

 「大変やなぁ」と言ってる時、自分はあくまで傍観者であって、出来ればそのまま人生を終わりたい。大変になりたくない、平凡の中を気ままに過ごしていたい。そう願えば願うほどに平凡は形を見失ってわたしの鼓動を変えていく。そのことがどうしても苦しくて、心臓の根を引き千切りたくなる。

 

 必死に生きようとすればするほどに頭は壊れていくし、丁寧を心掛けるほどに生活が乱雑なものになってしまう。この憎たらしい天邪鬼な生態を受け入れることで救われるのだろうか。微かな風が吹くだけで倒れ行くドミノの軍勢のように、連鎖的に破壊される脳組織を食い止めることが出来ないでいる。

 

 そんな自分を抱きしめることで愛に繋がるのならば、蛙の合唱はエゴイズムの不協和音。いついかなる時も側を離れようとしない自分自身を睨めつけながら、あらゆる類の機微を敏感に察知して泣いている。

 

 「 痛 い 」

 

 積もりに積もった感情が言葉として露呈する時、彼は世間から淘汰されるだろう。傷つけたいし、傷つけられたい。もう立ち上がることさえ困難なほどに、心をグチャグチャに音を立てながら搔きまわされたい。そんな願望ばかりを等間隔で並べた先に身を潜め隠れている平凡な世界は、きっと淡い色彩を施しているのだろう。

 

 そうやって色彩が空気中に解き放たれてやっと、空が完成する。飛ぶ為の羽根はまだ持ち合わせていない。それよりも先にわたしは空を創造する必要があった。この哀れな肉体から空を吐き出す必要性を感じていた。そんなことを想いながら、今日も「おはようございます」「さようなら」を繰り返す。一体何の為に、誰に対して、わたしはその言葉を必要としているのだろうか?。

 

 

 そんな些細なことで、平凡は少しずつ色を変える。