[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0186 鈴の音

 

 体質的に寒さには強い方だと思っていたんだけど、温かい空間に飛び込めばそこが楽園かのように錯覚する自分がいることに気が付いた。

 

 きっと、人間関係も同じなんだと思う。独りきりでも平気な顔しながら日常を繰り返しているけれど、人の温もりに触れるとその場を離れたくなくなってしまう。温かい場所が好きだ。だからといって寒い場所が苦手な訳ではないけれど、一度その温もりに触れてしまうと、これまでの”平気”が平気ではなくなってしまう様な気がする。

 

 脆弱な心だなぁ。それと同時にほんの少し笑みが零れる。いつまでも強くなれない僕が、弱いままの自分自身が嫌いではない。自傷的に自己否定を続けるよりも、ちょっぴり自分を肯定してあげるような、そんな関係性を築き上げたい。それが一番の温もりになると思うし、何よりも私自身の為になると思うの。

 

 帰る場所が無いと泣き叫ぶ時間があるなら、帰る場所を創ってしまった方が手っ取り早い。創り方がわからなければ本を読んだり人に教えを乞えばいいし、それさえも難しければ独学で試行錯誤を乱射していくしかない。現状を拒絶するだけでは、自分自身はこれっぽちも変わらない。だからこそ、わたし達は動き続けるしかないのだろう。時には致命傷を負うこともある、時には他人を傷つけてしまうこともある。傷つけ合うことでしか側にいられなかった私たちが適切な距離感を設けた時、初めてそこに体温が発生する。焚火にゼロ距離で接すれば火傷してしまうのと同じで、ただ距離が近ければ良いという訳ではない。そこには必ず距離感がある、あなたと私の精神的な距離間が。

 

 

 何もない日 × 7日の呼吸を義務的に繰り返し、そんな中で時折何かある日が訪れる。その刺激や温もりで心が満たされて、また何もない未来を生き抜くことが出来る。どれほどまでにその温もりに私が救われているか、あなたにあなた達に救われているか、わかっていないでしょう?。今日という時間が過ぎ去ることに耐えられるのは、過去に得た温もりが心の温度を保ってくれるからなんだよ。そうして私はわたしを保つことが出来るし、明日もわたしとして目覚めることが出来る。燃費が悪い心の音を、今日も鳴らすことが出来るのは、全部わたし以外の誰かのおかげなんだ。

 

 人の名前すべてに意味が込められているのなら、わたしはもう名前なんていらない。その代わりに、空いた隙間にたくさんの温もりを詰め込んでいただけませんか?。この先を生き抜くことが出来るように、寒い思いをしなくて済むように。

 

 

一人きりで、泣かない為に。