[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0313 深い海と見えない星

 

 たとえば、あなたが泣いたままの夜空の下では、ほかの理由で泣いているひとがいて、それをみて笑っている人もいる。十人十色の生き方を、間違えないように愛することは不可能だった。艶っぽい色彩が落ちる涙を包みこむ。ウイスキーに一滴垂らせば、それだけで世界が救われた? なにも変わらないままのわたしを、あなたはいらないとどこかへいった。その姿を探そうとしても、星のない都会ではなにも見えなくて、ギラギラとしたネオン街だけが、緩やかに手招きをしていた

 

 流れ星が落下してたくさんの人が消えたあと、空に昇る一本の煙は、いつもより少しだけきらめいて見えた。いいなぁ、それが本望であればいいのだけれど。みんなには、家族がいて、大切なひとがいて、生きていて、そういうの、憧れの中身から外にだしてあげたい。どうして?を考えるために生きているのだとすれば、人生なんて、これっぽちも美しくない。ことばにできないものを探すために、夜空の下を歩いてる。見つからなくて、ずっと、泣いている。それはそうよ、だってここは都会だから。笑っても、泣いても、静かに、それは静かに、ひとの中に埋もれてしまう

 

 都会と深海 は似ている。なにをしても、だれにも気づかれないままだ。そこでは生きていても、死んでいても、突然いなくなっても、だれかのことを愛しても、そこにいる誰も彼もが、わたしにはそんなこと、ぜんぜん関係ないと思ってる。夜空には、今日も星は見つからない。それでよかったのかもしれないね。みんな知らん顔をして、たくさんの命が生きている。一生懸命に、日々を生きている。それもわたしには関係がないこと、なんて簡単に思えないから、苦しくて、疑問ばかりが渦をまいて、わたしの首を絞めている。息ができないと感じるなか、深海に沈むわたしがいて、底を知らぬ感情だけが、いつまでも優しかった

 

 いったい、いつになったら浮かび上がるのだろう。きっとそこには星がたくさん散っていて、もうだれのことも見逃さない、明るい世界。そこにいけばあなたのこと、見つけられる気がして、そういうこと考えると、ほんの少しだけ、わたしが浮いた。水面に、夜空に、涙のなかに。あなたを見つけるために、わたしは最後まで、浮いていた