[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0327 帰れないままの子供たち

 

「自分を壊そうとしないでほしい」

 

 斜影 / 眩暈SIREN

 

 これまでの道のりは何ひとつ間違っていなかった。そんな優しい言葉、自分自身に力強く投げつけたい。幾つもの罪を踏み潰して歩いてきた。生きてきたことすべてが正しかった。そのなかでこれ以上のなにを望む? いなくなりたいと思いながら生きてもいいじゃない。人間は思考する生き物なのだから、なにを思い、なにを考えていても、自分が自分として生きているだけで、ただそれだけでよかった。ありがとうを優しく手渡したい。ごめんなさいを穏やかに手放したかった。

 

 傷つくことでしか理解できない痛みの温度を知るために、ずっとずっとわたしは私を蔑ろにしていた。壊れてしまえばいい、もっともっと傷が増えればいいと思っていた。「傷だらけの宝石になりたい」輝きを失えばただ脆いだけの石ころだ。愛されたい気持ちを廃棄して、大切にされたい思いを見ないフリして、ただ無表情を続けるわたしのこと、視界に入れようとはしなかった。鏡が大嫌いだ、目を合わせることが苦しかった。いつまでも逃げ続けて、素直になることを忘れてしまって、その歪みきった鋭利な愛情で、自分を切りつけることしか出来なかった。

 

 生きていてごめんなさい、愛されたくてごめんなさい、なにもできなくてごめんなさい、見捨ててしまってごめんなさい、産んでいただいてごめんなさい。年齢を重ねるにつれて謝罪ばかりが増えていく。そんな人間のこと、一体だれが愛おしいと思える? だれもそんな感情は抱けない。だって、自分自身がそれを出来ていないのだから。愛されたいが為に行動を起こすことを下心と表現する。しかし、その対象が自分自身の場合は、健全な愛情なのだと言い切りたい。たったひとつの断言がわたしを温かく包み込む。そうして初めて、優しさの注ぎ方を思い出す。

 

 一年後には、わたしたちどうなっているかわからないね。ひとも、世界も、変わり続けるものだから、あなたも、わたしも、きっと別人になっているのだろう。でもね、根底に咲く花はいつまでも枯れることを知らず、だからこそ関係性が繋がっていく。わたしは、私に優しく在りたい。もう充分に傷つけた、痛みが離れないほどに傷ついた。たくさんのもの、失った。それでも残り続けている身体があって、歪みきった精神がある。だれもわたしを愛さない、それと同時に、だれもわたしを傷つけられない。わたしは私を肯定します。死にたいこと、愛されたいこと、幼いままの感情さえも、なにもかも全部つつみこんで、傷ついた全てと向き合っている。

 

 

 すべての優しさに、ありがとうを伝えたい