[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0487 孤室のなかで思うこと

 

 久しぶりに体調が崩れました。連続した暴飲暴食によるものかもしれない。なんだか無気力で運動していなかったからかもしれない。生きることを見失っていたからかもしれない。こうなってはじめて健康の有難みを再認識するなんて人間は愚かだ。なーんにもやる気にならんのです。健康があってはじめて何かに挑戦できるのだな。本当は今すぐにでもお酒を飲んで、体調不良であることさえも忘れてしまいたいのだけど、さすがに力を振り絞った自制心。きっとこのままでは一生こんな感じ、意識的な無気力製造マシンになる。誰かとお話しがしたい、ほんの少しでもいいから繋がりを感じたい、家族の温もりみたいなものを錯覚したい。いまのあたまの中はこんな感じで、愛されることばかりを考えていた。もう誰もいないのだ、そんなことはわかっていても、理解しているからこそ手を伸ばしてしまう自分がいる。あたまの中の何もかもぜんぶ、ぶっ壊してやりたいよ。本当のわたしは一体どこに隠れているの、一人でお酒なんて飲みたがらない、孤独なんて全然恐れることがない、本当のわたし。

 

 なにもやることがないので水音のBGMをスピーカーから流している。目を閉じてると本当に水の中にいるみたいで、そのままどこまでも、深く深く沈んでいく。束の間の休息、目を開ければそこには現実。広がるばかりの白い天井に嫌気がさして、たくさんの睡眠薬が欲しくなった。ずっとずっと眠っていられれば、夢が終わらなければよかったのに。水中でずっと浮かんでいる、そんな無限を望む瞬間がある。それでも現実は残酷で、わたしは泳ぐことが出来ないし、そもそも水中では呼吸が続かない。いとも簡単に生命が終わるのだ、永遠の夢が存在しないように、現実はもっと限りなく有限であった。どうして生きているの。どうして空腹を満たそうとするの。生きる理由を探すようになってからが序章で、生きることそのものに意味がないこと、そこにたどり着いてからが本章だった。自分にしかできないこと、とまではいかなくても、自分にできることってなんだろうと考えるのが聖人で、それならば全部ぶっ壊そうと思い至るのが狂人である。現在のわたしはどちらかといえば、狂人のほうに寄っている。

 

 シラフで過ごす真夜中はどこまでも恐ろしさが続いていて、出口のないトンネルを歩いているみたいだ。だから早く眠りたいと思う、ずっと眠っていたいと思う。夜のなかにいることが怖かった。ひとりを受け容れることが痛かった。悲しくても泣くことが出来なかった、誰かに助けを求めることは不可能に思えた。みんなそれぞれの家庭があって、それぞれの事情がある。悲鳴はあくまで環境音みたいなもので、水音のBGMと何ら変わりはない。だれも真剣にBGMと向き合おうなんて思わないでしょう。だから世の中にはカウンセラーという職業が確立されている。それでもね、どうもこんにちは初めまして、の人間に、自分の胸の内をペラペラ話すことなんて出来なかった。上辺だけの共感とか、薄っぺらい相槌とか、とても心に痛いのです。嗚呼、こんな風にどこまでも深く沈んでいく。走馬灯は未だにみることが叶っていない。一人の夜を忘れてしまえる、そんな愉快な夢が見たいのよ。いまはどこまでも深く、眠り続けたかった。