[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0504 わたしたちの地獄

 

 色んな考えの人がいて、それぞれの魅力を持った人がいる。日々、人と関わり合う中で様々なすれ違いやそれっきりをたくさん経験しているけれど、その上で関係性が続いている人、好きな人というのは、なんだかとっても不思議な存在だと思った。確率論でいえば、二人の出会いはものすごい確率である。生まれた時代や場所が異なればなおのこと、この出会いは一体なんだろうと考えてみる。必然、の二文字があたまの中にポツンと浮かび、わたしの二十代が息絶えようとしている。

 

 ずっとずっと、苦しかった。苦しいまま生きていた。けれども、その息苦しさはどこまでも続くということ、そのままでいいんだという事を教えてくれた。この息苦しさから逃れることばかりを考えていたんだけど、全然そんなことはなかったんだね。たとえば、この苦悩が解決しても、また違う苦悩が薄笑いでやってくる。我々は楽になることを許されないのだろうか。いつまで経っても離れないままの苦しみ、この先もずっと同じ様な感覚が続いていく。その事実に少しだけ安堵が生まれた。そんなものなのか人生、心の重荷が音を立てて崩れていく。

 

 この地獄を味わうことも悪くないのではないかと思えた。人それぞれの地獄、わたしの地獄、あなたの地獄。楽しい経験ばかりでは、人間に深みが出ることはなかった。わたしが話していて楽しいなと感じる人は、どこかしらで地獄の波長が合っているのかもしれない。感ずること、想うこと、その一字一句が同じものではないにしても、一部分が綺麗に合わさっていたりするのかもしれない。だからまた会いたいと思う、だから友であり続けたいと思う。いつか消え去るその時まで、二人の地獄のこと、話し続けていられれば。そんな奇しくも愉快な地獄のなか、共に突き進んで行く二つの背中。歩みの最中では決して振り返ってはいけないよ、地獄に飲み込まれてしまうからね。