[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0166 大丈夫、最後まであなたは一人ぼっち

 

 「大丈夫、あなたは一人じゃない。」

 

 偽善に満ち溢れた揶揄からは愛を感じられない。きっとそんな感じで私は様々な重要性を取りこぼしていく。一人に決まってんだろ、バカ。どこまで行ってもどこへ辿り着いても所詮一人の人間でしかなくて、そういう前提でしか存在出来ない生き物なんだ。疑念が充満した笑顔からは下水道みたいな臭いがして、金が無かった時代の雨模様を思い出す。

 

 一人と一人が手を取り合い踊りだす、かと思えば殴り合ったり、少し目を離した隙に交わっていたりする。そうしてサヨナラを告げた後には雨が降る。濡れると風邪を引いてしまうから、カバンに常備している折りたたみ傘を差す。誰かが手を差し伸べてくれるなんて期待してはいけない、期待こそが一人ではなくなった自分を錯覚させる。自分のことは自分で責任を取る。濡れたい気分なら雨に打たれていればいいし、絶対に濡れたくないなら家の中から出なければいい。

 

 臍の緒が切断された瞬間から心拍数が停止するまで、撒いた種が花を咲かせて枯れるまで、錆びれた悲劇の冒頭から終幕まで。その中であなたは何を思う?いかなる手段を用いて体温を感じようとしている?。そんなことを考え出すと脳から笑いが込み上げてくる。クスクスクス、クスクス、哀れで滑稽な赤子たち。一見すると複雑そうだけどその実は単純明快な脳味噌たち。一通り世界を嘲笑しながら朽ちていく、そんなわたしも例外ではなく一人ぼっち。

 

 その事実を自覚しているからこそ誰かを求める、感情を共有したいと願う。回し車を懸命に走るハムスターのようで何だかとても愉快な気持ち。つくづく痛感するのだけど、わたしは私を愛している。だからあなたも自分自身を愛してあげてほしい。ただそれだけのことで、”一人”は世界に羽ばたくことが出来るから。理解や共感を飛び越えて、雨の向こう側に行くことが出来るのだから。

 

 愛情を燃やして、冷えた心を温めて。灯火が消えてしまうその瞬間まで、抱き締めて大切にしてあげる。きっと指切りげんまんが果たされることはない。針千本を飲まされるわたし達は限りなく赤子のままで、枯れ行く花の一部だった。温かいと感じることだけが現実で、それ以外は何も求めなかった。「だって一人なことに変わりはないから」それ以上でもそれ以下でもない、わたしにとってそれだけが唯一の救いであり、一番の悲しみであった。