[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0189 噓泣きのくせに

 

 絶望的なまでに強く激しい雨に打たれたい、そんな気分。一喜一憂の達人、人生はいつだってジェットコースター、理想的なメリーゴーランドはいつまで経っても止まったままで。つまんないな、つまんないな、って下らなさをこの世界に責任転嫁してる。

 

 毎日ハッピーですみたいな人間が苦手だし、私とても幸せですみたいなオーラ醸し出してる人間は最高に嫌いだ。そういう類の人間を見ると、何故か煮干しを思い出す。眼球と口を全開にした幾つもの死体が人間向けにパック詰めされている、あの光景が脳内を泳ぐ。なんか頭の中が魚臭いな、鼻腔にまで幻臭が染み渡ってきて、今日一日が台無しになる。たった一匹の煮干しのせいで、たった一匹の、煮干しのくせに。

 

 だから、私は煮干しにならないように、魚臭くならないように、幸せを自ら遠ざけているのかもしれない。逃避癖、そんな感じで人生をつまらなくしているのは間違いなく私。でもね、つまらなくてもいいんだ。何も起きなくてもいいんだ。幸せを感じられない状況に少しの不幸が入り混じること、もう駄目だと悲観的になったり、うわぁめっちゃ最悪だって思えること。それが自分には合っているし、その中でポツリと細やかな幸が見つかることだってある。下を向きながら歩いているからこそ転ぶ原因になる石ころを避けられるし、そりゃあ時には人とぶつかることだってある。「沈黙は金」って自分に言い聞かせて適当にやり過ごそうとするけれど、心にとってそれは地獄で、もうみんな死んでくれよと星に願いを込めてしまう時もある。

 

 いっそのこと自分も煮干しになってしまえば、袋詰めされた死んだ魚の一員になってしまえば、すべての痛苦から解放されるかしら。空気を占領する魚臭さも感じなくなるかしら。そうして全てを感じなくなったとしても、平穏に生きられるとしても、そんな人生はまっぴらごめんだ。わたしは、私であって、海底で誰にも気づかれないまま、静かに消える。そしていつかは、みんなから忘れられたい。そんな密かな願望を叶える為に、いまはつまらなくていいんだよ。悲しさを言葉にしてもいいんだよ。吐き出して吐き出して中身が空っぽになった時には、いなくなったっていいんだよ。

 

 

 「雨に打たれたい、そんな気分。」