[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0209 光の隙間から

 

 結局のところ、今日も一人で飲んでいて。

 

 もうスマホを触ることインターネットの波をスクロールすることにも飽きてしまったから、頭の中を空っぽにして文章を書いてる。とかいいつつも結局スマホ触ってんじゃん、と一人ツッコミを入れつつも、隙間無くビールを流し込んでいく。

 

 

 生きているだけで無力感が加速していく。酒を飲むと無力な自分を肯定できる。そんな気がして、錯覚を錯覚だと認めた上で相も変わらず似たような夜を繰り返している。「何してんだお前」って自分自身に吐きかけることにも疲れてしまったから、もう何も考えていないフリをしているよ。地球が回転を止めた時には世界の流れが変わってしまうけれど、僕の頭が凍結したところで誰一人として被害を被らないのよ。それは、間違い無く自分自身でさえも。

 

 生きているだけで落ち込みが積み重なっていく。寂しさを産み出すことも疎ましく感じられて、ただそこに佇んでいるだけの様なそんな感覚。わたしが私でなければ良かったのに。全て何もかもを他人事として気楽に呼吸をしていたい。ただ笑っていたかっただけなのに、ただ静かに生きていたかっただけなのに、耳の中を隅々まで轟音が駆け回る。やめてくれよ、それもこれもあれも一体何を?。

 

 生きているだけで温もりを求める。寒空の下で凍える素振りを見せてみたり、自罰的になったりしてみて、誰かの気を引こうとしている。人間ってそんなものだ。わたしってその程度の存在なんだ。笑いながら一緒にご飯を食べたかった、気持ち良くお酒を飲みたかった、「おやすみ」という声音を感じたかった。そうやって、ただ単純に生きていたかった。

 

 かけ離れた理想と現実の落差に自分自身が乖離してしまって、わたしは自分自身が誰なのか分からなくなっている。とうの昔に随分と多くの無形を失ってしまった。いま手にしている物よりも、失くした過去ばかりを数えている。1、2、3、4、5、、、次第に片手では足りなくなって、両手を使っても足りなくて、足の指を駆使しても足りなくなった。やがて自分自身を失うのか、私はわたしを亡くしてしまうのか、そこまでしてこの世界に縋り続ける意味はあるのか?。

 

 夕飯時に民家から排出される手料理の香りが苦手だ、香りが過去を呼び寄せるから。嘔吐物の臭いが苦手だ、何度も何度も一人で吐いた夜を思い出すから。わたしの香りが好きだ、唯一無二であり普遍的な調香だから。この世界が嫌いだ、そんなわたしをいつまで経っても苦しめ続けるから。