[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0220 白目の中の渦

 

 こんなにシラフでいるのはいつ振りだろう

 なんて思ったものの、

 数日前に飲みに行ったんだけど

 なんならこれが投稿される頃には

 今日の飲み会を終えています

 

 ひとりでお酒を飲まなくなった

 一人では正気です

 噓をつきなさんな、

 昨晩は久しぶりにストロングを飲んで

 激しく後悔しているいまこの瞬間

 夢の中でも全力疾走をしていて、

 ほとんど眠れた気がしない

 

 

 お酒を飲まないでいると、シラフの私で居続けると、時間と共に視野が良好になる感覚がある。これまでは、眼球を刺すありのままの光景の重圧に耐えられなくて再びお酒に手を伸ばしていたんだけど、最近は広がりゆく視野に対してある程度の耐性がついてきました。それでも苦しいんだけどね、けれども以前ほどの痛みは無い。どうしようもなく無力だなぁと思うんです。ヘベレケの状態よりもシラフでいる方がフワフワと身体が浮いているような実感があります。お酒を飲めば地に足がつくのだけれど、増え続ける重みに心身が耐え切れなくなって直に動けなくなっちゃう。どっちがいいんだろうね、どっちの方が自分らしさに満ちているのかな。

 

 花の種子にやる水をアルコールにすり替えたら、その種子はどんな花弁を咲かすのだろう。見るに堪えない歪な造形だったとしても、それはそれで一部の人間が評価してくれる。咲いた時点で、部分的な勝利を手にする。『それは誰からの評価?誰と争った結果の勝利?そもそも咲いたように錯覚しているだけでは?』そうだね、きっと酩酊の中で何もかもを都合よく解釈しているだけだ。花なんて咲かない、誰も評価しない、些細な争いすら起こらない、全く持って下らない。

 

 ふわふわふわふわ、浮いて浮き続けてどこまでも飛んでいければいいのに。宇宙の中で窒息死がしたい。ありとあらゆる重力から逃れたい。それでも誰かに救われて、宇宙人、宇宙飛行士、それともまだわたし達が見たこともない概念に。もしもそうなったなら、わたしは意を決して生きるしかない。救われた命は最早自分自身だけでは独り占めできないだろう。そこには手を差し伸べてくれた人達の、いくつかの温かい重力が積まれている。それが命の重みだ、それこそが適切な重力だ。

 

 目を覚ましたわたしは、地面の上に転がっていた。まだ鳴り止まない頭痛に顔を顰めながらムクリと上体を起こす。ゆっくりと右膝を立て、地面をけり上げるようにして立ち上がった。地面と両足が綺麗に密着している。少し息苦しさはあるけれど、好き勝手に身体を動かすことが出来る。果てしなく広がる荒野に、人影も建物も見当たらない。これからどうしよう、どこに向かって歩いていこう、どのようにして命を燃やそう?

 

 

 無力な渦の中で、わたしは自身に問う