[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0332 さて、どこへ行くか

 

 これは自分でも不思議なことなんだけど、わたしは見知らぬ人からよく道を聞かれる。

 

 国内の方も、海外の方も、なんか知らんがよく道を尋ねられる。「○○にはどういけばいいですか?」「#%%'#&%'#&&%#' ?(外国語)」そして、どうしてか尋ねられた場所を知っているわたしがいる。よく使うのはGoogleマップで、「いま僕たちがいるのはここで、とりあえず直進、二つ目の角を左に曲がってください」みたいな具合で説明すれば無事解決で一安心。

 

 問題なのは海外のお方で、ごめんなさい、わたし、日本語以外の言語が本当に苦手なんです。いつかは習得したい、せめて英語ぐらいは日常会話レベルを習得したいとは思っているんだけど、重い腰が、というよりスカスカの脳が、いつまでも言語を学ぼうとしてくれない。「#%%'#&%'#&&%#' ?(外国語)」駄目だ、頭をフル回転させても疑問形であることしか理解できない。そんな感じでソワソワあたふたしていると、スマートフォンの画面をわたしに見せてくれる海外のお方。そこに表示されているのはGoogleマップ。見事覚醒するわたし、指先で道順を示し、ネイティブの「ネ」の字も存在しないカタカナ英語を用いて、なんとか必死に正解を伝える。「OK! arigatou.」という言葉に対してどう返答すればいいのだろうか。「よい旅を!」を英語に変換することができないわたしは、作り笑いを浮かべながらただひたすらに手を振りつづけた。

 

 ただ自転車を漕いでいるだけで「すみません!」と呼び止められた。「この辺にリサイクルショップってありますか?」とのこと。偶然そこから徒歩1分圏内にリサイクルショップがあることを知っていたわたしは、「この道を真っ直ぐ進んで、左手にありますよ」と伝えたところ、「この財布を売りたいんですけど、売れますかね?」と使いこまれた長財布を見せられた。「うーん、わたしは素人なのでわからんですねぇ」と返答すると、「そうですか......」と悲し気な背中を見せつけながら、彼女はリサイクルショップに歩みを進めた。

 

 駅のホームで電車を待っているとき、「Hello. #%%'#&%'#&&%#' ?(英語)」が左耳に突き刺さった。『どうしようほんまに挨拶以外なんもわからんで(心の声)』→「ハロー!」とりあえず元気よく挨拶、笑顔で挨拶は世界各国の共通言語である。またもや内容が理解できずあたふたしていると、スマホの画面を見せてくれた。しかし、そこに表示されているのはGoogleマップではなく、英語だらけのWEBページ。あらま困ったな。けど、テキストの方が幾らか捉えやすいものがある。必死の形相で知っている単語を探し求めた。こういう時、人間の脳はフル回転するものである。一つの単語が眼球に飛び込んできた。「Himeji Station」→「姫路」→「ヒメジ?」と問い返すと、「Yes!!」と元気の良い返答。「オーケー ディストレイン ゴー ヒメジ」に合わせてすかさずこちらもスマホ画面を提示した。たまたま乗り換え検索をしていたので、到着時刻が表示されている。「この電車で姫路駅までたどり着けるよ。この時間に到着するよ」ということをありとあらゆるジェスチャー、カタカナ英語、スマホ画面を駆使して伝えたところ、「Oh,Thankyou!」と安堵の笑みを浮かべていた。その後は手を振り合い、わたし達は別れたのだった、

 

 これって一体なんなのだろう。自分が知らない人に道を聞くとき、必然的にどこか優しそうな人に声をかけると思うんだけど、客観的に見て、自分、全然優しそうじゃない。いつ何時も黒ずくめ、サングラス、無表情、の三拍子。友人からも「黙ってると怖い」と言われる始末。柔和な笑顔を浮かべているわけでもないのに、幾人もの中からどうしてわたしを選ぶのか。本当に不思議で仕方がないのだ。たまに、どうしても言葉で説明するのが難しいときがあって、海外のお方ならそれは尚更で、そういう時は「カモン!」とか言いながら目的地まで一緒に行くときもある。「ごめん、その場所わからへんねん」と返答することが悔しくて、目的地が知らない場合でも調べ上げる。ご年配の方に乗り換え駅について質問されることもあって、あれ、もしかして、駅員さんと間違われてる? なんて思う事もある。

 

 外見としては話しかけにくいはずなのに、話しかけられることが多いわたしは、どこか話しかけやすい雰囲気を醸し出しているのでしょうか。人間としての、矛盾。でも、話しかけられて悪い気はしないのです。期待に応じられたときは、なんだかこちらまで嬉しくなる。そういう性質を話しかける方は見抜いているのでしょうか。もしくは自分からそういうものが溢れてしまっているのでしょうか。今度道を尋ねられたときは、「どうしてわたしに聞いたの?」と逆に質問してみたい。まぁ、そんなことは数日眠れば忘れてしまって、また道を尋ねられて、少しだけ温かくなってる自分がいるね。きっと。