[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0436 裏と表のどちらかを

 

 思っていないことをあたかも思っているかのように言葉にするのって、実はどうにも簡単である。でもそれって、自分を裏切るということじゃないですか? 自分に対する信頼をすこしだけ削ぎ落とす行為だと思うんです。はじめはほんの一欠けらでも、気がついたときにはそっくり丸々自分自身が入れ替わっていて、誰だか知らない奴になっている。そんなのって、大切な個性を失うみたいでなんだか悲しいじゃないですか。だからわたしは、思ったことしか伝えない、感じたことしか表現しないことにする。午前3時、飲み屋のカウンターで煙草の香りが。