[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0443 地図にない街

 

 目的をもって生きることが美徳として扱われているけれど、なんとなく流れに身を任せていたらここまでたどり着いた、という生き方。これもまた人生、悪くないのではないだろうか。

 

 地図があればわかりやすい。目的地点が定まっていればもっとわかりやすい。自分がいまこの瞬間、どの辺りにいるのか、これからどの道を進めばいいのか、そこに答えが書かれている。人間はわかりやすいものが好きだ、だから先にゴールを決める。その通りに従って、進んで、歩いて、最短距離で赤旗を目指す。それはそれで素晴らしいのだけれど、なんだかとってもお利口さん、ちょっぴりつまらないと感じる。そんなわたしがいる。

 

 予測できる日常、人生、そんなのってなんだか味気ない。もう全然先が見えない、だからこそ何でも面白がって踊っていられる。見えないからこそ、無邪気に笑っていられるのだ。外に飛び出せば、日々色んなことが起こります。良いことも悪いことも判断を下さなければ、そのどれもが「未知」なのであった。だからこそ楽しい、だからこそ悲しい。悔しくて嬉しくて虚しい。見通しの立たない人生、結構気に入っている部分でもあります。

 

 直感を大切にする。心の声に耳を傾ける。これだけ出来ていれば、あとは肩の力を抜いてのんびりしていればよろしい。しょうもない競争からは早々に離脱してしまって、あなたはあなた自身を、わたしはわたし自身を生きていられれば、それですべてが満たされたはずだった。それなのに。無いものばかりを渇望して、求めて、手に入らなくて、勝手に一人で失望して。それはまるで観客のいないトークライブのようであって、意味のない一人遊びなんである。気合を入れ過ぎたり、生き急いだり、人として不自然な反応を心身は快く思わないだろう。ほんの少しずつ、彫刻刀で削られるみたいに自分が薄ペラになっていく。

 

 世の中の常識とやらを全部ぶっ壊して、自分の世界を生きること。しなければならないことなんて、ほとんどなんにもありはせんのです。地図に縛られてはいませんか?  苦しくなってはいないでしょうか? 時には気分に任せて寄り道のススメ。予定にない景色を味わってみることも悪くない。時には遠回りを選択しながら、のんびり歩いていきたいものです。地図にない街を見つけたときには、好奇心を優先することが大事。街の居心地がとってもよければ、そのままそこに住み着いて暮らすこともこれまた味わい深い。そんな生き方、優しい風が舞い込んでくる予感。