[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0134 甘い日常

 

 わたし達が呼吸を続けていくには、お金が必要不可欠だ。大体の悩みはお金を積めば解決できることが多い。欲しい物を買えば、好きな物を食べれば、その瞬間はある程度満たされる。でもその幸福感は持続しない、少しばかりの虚無だけが後に残る。

 

 必ずしも使用額と幸福感が比例するとは限らない。私は、ホテルのフレンチを頂くよりもサイゼリヤでたくさん食べられる方が心躍るし、大勢の飲み会で流し込む酒よりも家でストロングゼロを飲んでいる方が幸せを感じる。結局、どれだけ使うかよりも、どのように使うかが要となる。

 

 そんなこと知っとるわ、と思われた方は素晴らしい。自分はお金の使い方を知るまでに随分時間がかかってしまった。ろくに貯金もせず、あればあるだけ使ってしまうような生活を繰り返していた。金を使うことで表出する一時的な幸ばかりを求めていた。単純にドーパミンが少々多く出ている程度に過ぎないのに、名ばかりの幸福感に溺れていた。

 

 一番お金を使っていたのは、どう考えても飲み代だった。誰かと飲むのはもちろんのこと、一人でも居酒屋やBARで飲んだ。基本的に、お酒を飲んでも何も残らない。たくさん会話できるし、その場は楽しい時間を過ごすことが出来るけれど、翌日に残るのは虚無感と二日酔いの称号だけだ。「二日酔いになりました」ということをブログに書けるだけだ。ただただ、時間と資金が無の中に消えていく。

 

 きっと寂しかったんだな。どう考えてもお金を使い過ぎていたけれど、当時のことを後悔はしていない。自分にとってそういう時期は必要だったと思うし、その経験があるからこそ、現在のささやかな幸を感じ取ることが出来る。

 

 

 もう無闇に自分を削ることは止めてしまった。飲みに出かけることも随分と減った。それ故に、たまに飲みに行く時はこれまでよりも大きな幸福感に包まれる。「全額自分が支払ってもいいと思えるか」という指標で物事を考えると、その時間の価値が浮かび上がる。自分が誰かと飲みに行く時は、心から”この人と同じ時間を共有したい”と思っている。酒を飲めれば誰でも言い訳ではない、わたしはあなたとお酒が飲みたいのです。

 

 飲みに行くことが少なくなると、驚くほどお金が減らないことに気がついた。基本的に、わたしはほとんど物欲が無い。あれば便利だろうなと思う物は幾つかあるけれど、現状それがなくても困っていないので、結局手に入れず終わってしまうことが多々ある。本当に必要なものは、悩むことなく即断即決していると思うから。

 そして、現在の自分にとって必要なものをすべて手に入れてしまったから、物を買う事がなくなってしまった。それはそれで何だか寂しい感じがあるけれど、自分が変われば必要な物も変わっていくだろうから、今後どういった物が欲しくなるのか楽しみではある。

 

 現代を生きる上で、お金を使わなくても楽しめることはたくさんある。ウォーキングやランニングをすれば身体を動かして気持ち良くなれるし、カフェで本を読む代わりに図書館を利用するのもいい。サブスクリプションサービスを活用すれば定額であらゆるコンテンツを楽しむことが出来るし、友人を自宅へお招きすれば少額で楽しい夜の時間を過ごすことが出来る。何故か、お金を使わなければ使わなくなるほどに、満足感が高くなる。これは自分が貧乏性なだけかもしれないけれど、そんな自分が嫌いではない。

 

 それでも、本に費やすお金は惜しまない。少しでも心が動いた本は容赦なく買う。映画も同様に、気になった作品は映画館で観る。ブログにも課金している。たまにウイスキーをボトルで購入する。自分にとって大切なことにはたくさんお金を使う。そうすることで、自分がアップデートされていくし、お金に対しても感謝が出来る。お金に感謝するようになると、どうでもいいことにお金を使わなくなる。そういう好循環を作り出すことが出来れば、気が付いた時にはある程度の資金が積み上がっている。

 

 現在のわたしには野望がある。ある程度資金が貯まったら、もう少し広い部屋へ引っ越しをすること。そして、その部屋に親しい方達を招き入れること。皆がいつでも帰ってこられるような居場所を作りたいと思っている。今後も料理をするつもりは寸分も無い為、食べ物だけは各自持参いただきたい。わたしはそれ以外の方法で客人をお持て成しいたします。

 

 都合の良いように使ってくれて構わない、私も都合よく温もりを分けてもらうから。そうやって、少しでも一人の寂しさを紛らわすことが出来れば、この先もしばらくの間は生きていける気がするんだ。不器用だから、そういう生き方しか思い付かなかった。わたしには、帰るべき理想郷が必要だったんだ。

 

 

 今日はとっても心が疲弊した。

 早く眠りたいけれど、一人で眠りたくない

 

 居酒屋にでも寄って帰ろうかな、

 なんて馬鹿げた現実逃避を考えている

 

 

 理想郷を手に入れるのは、

 もう少しだけ先の話しになりそうですね。