[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0161 脱皮

 

 最近、目が覚める度に人格が変わっている気がする。

 

 とてつもなく陽気な人格、陰キャの極み乙女な人格、神経質過ぎて身動きが取れない人格、ただ無鉄砲に突き進む人格、ひたすらに体温だけを求める人格。

 

 誰しもがそんな感じなのだろうか。単純に気分の乱高下が著しいだけなんだけど、「大変そうだな」客観的に眺める自分が他人事のように呟く。

 

 自分のようであって、自分自身ではないような感覚。毎日違う誰かを演じていて、その演者を遠目に観察している異なる自分もいたりして。もう少しだけ安定してほしいなとは思うけど、眠ってしまえば間髪を入れずに新たな自分がやってくる。

 

 「お前は誰だ?」

 

 鏡の中に在る自分に問う。ベリベリと何枚も皮を剝がし続けた結果、ここまで大きくなってしまった承認欲求が憎らしい。成長するのは”その部分”ではないでしょう、それでも全く持ち合わせ無いよりはマシなのかな。合わせ鏡に連なる幾人もの自分を愛する為に、今日も作り笑いを浮かべている。

 

 上手く言葉では表せないけど、なんだか一周回ったような感覚がある。向上心と行動力の塊だった自分が精神を病み打ちひしがれる。そこから異性やお酒に溺れて現実とサヨナラをした。唯一手にしていた文章と向き合い一縷の希望が差し込む。大幅な実力の欠落を目の当たりにして絶望する。そして、のっそりと起き上がり毒を吐く準備が完了した。

 

 そんな訳で、これまでも様々な人格が「私」を形成してきた。そう考えれば、日々変化する新たな自分に違和感を覚えること、それ自体は正常な反応だと言えるだろう。まだまだ自分は制作過程の最中にいて、上手く変化出来ているということだ。

 

 良くも悪くも、わたし達は変わっていく。己が変われば世界は変容する、その逆もまた然り。そんな中でも不変的な一部分は必ず存在しているから、その一部分を明日の自分と共有してあげればいい。夜が来て眠りにつけば、今日の私は死んでしまう。だからこそ、大切に繋いでいく必要がある。明日の自分が困らないように、迷子になって泣いてしまわないように。

 

 

 傷付くことは怖いけれど、

 変わらないままでいることはもっと怖い。