[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0199 余裕の象徴

 

 基本的に仕事がある日はお酒を飲まないでいる。

 

 私にはやりたいことがたくさんあって、酒を飲んでしまうとその何もかもに着手出来ずに一日を終えてしまうから。「時間が足りねぇ」というよりも酒を飲む為の時間だけが足りない。最近になって、人生の中でその時間が一番大事なんじゃないかと思うようになった。

 

 忙しなく日常を送ることもいいけれど、「そんなに急いでどこに行くの?」と自分自身に伝えたい。”急いては事を仕損ずる”とよく言ったものだけど、上手く事が運んでいる時はのんびりと何も考えずにいることが多い。逆にあれもこれもとバタバタ焦っている時は、壊滅的な失敗を生み出すこともある。

 

 そんな日常の中に500mlのオアシスがあってもいいんじゃないかな。近年の研究結果ではアルコールは百害あって一利なしとの見解が多いけれど、自分の中で”一利”が生まれるのであれば、それを楽しみに生きることも悪くないと思うの。以前、何かのインタビューでカズレーザーさんが言っていた「人間少なからず何かに依存しながら生きている」という言葉が印象的で好き。正にその通りだと思う。わたしは、書物に依存しているし、お酒に依存していて、音楽や香りへの依存度合いが大きい。”依存”って言葉は、"心の拠り所"と言い換えることも出来ると私は考えていて、拠り所があるから苦しくならずに済んでいる部分が多少なりともあるんじゃないかな。寄りかかり過ぎると潰れてしまうこともあるから、そこだけは注意しないといけないけれども。そして、そんなカズレーザーさんは夜中にホッピーを飲んでから眠るそうです。何とも素敵で憧れてしまう、夜。

 

 自分の中でアルコールは余裕の象徴であって、その感覚が最も顕著に表れるのがウイスキーです。ロックグラスに注いでから喉を通り抜けるまでの沈黙、体内を少しずつ焼かれるような快感、あらゆる作品との相性の良さ。ウイスキーを飲んでる間は時間の流れが緩やかになる。以前は効率的に酩酊する為の時短酒として活用されていたオンザロックが、現在は柔らかな心の緩衝材として側にいてくれる。別に無くても生きていけるのだろうけど、そこにある方が確実に豊かになれる。何よりもお酒の無い人生なんて想像するだけで恐ろしいや。

 

 余裕綽々で、楽勝で、優雅に毎日を過ごしたい。その為には小休止が必要で、私にとっての休憩地点がアルコールと戯れることなんです。叶うのならば、ずっと休憩していたい。それほどまでに人生の中で重要な役割を果たしている。もしかすると、遠くない未来では病的に依存しているかもしれない。例えそうだとしても、私はアルコールと共に歩んで行きたい。そう思わせる程の魅力が、お酒には多分に含まれていると実感しているのです。

 

 

 ほろ酔いながらも、明日を目指して歩いて行きたい。

 

 道端で転んだとしても、空虚な笑いを空に響かせ、痛みさえも感じないように。

 

 一人きりで、たった一人きりで、生き抜けるように。