[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0406 電柱の鳥

 

 起床してすぐに布団を抱え込み外の世界へと歩き出す。空の明るさが冬の消滅を示しているようで、なんだかちょっぴり物悲しい。最寄りのコインランドリーに到着。誰一人として、他に洗濯物すら存在しない静寂のなか、そっと小銭を入れる。明け方のコインランドリーが好きだった。誰もいない空間、わたし以外の他には誰も。世界の王様になったみたい。ひとりだけの王国、それは正しく孤独の王国。きっと哀れな王様だった、一人で生きることなんてできないのに、世のことわりを無視しようとしている。悲しいね、お前もわたしも。電柱に鳥がとまっている。雀でも鳩でもない名もなき鳥は、一体誰のことを待っているの。きっと知らないだけなのだろう、お前の名も、待ち続ける理由のことも。知らないことがたくさん散らばる世の中で、それでもあなたのこと、もっともっと知りたいと思えているよ。そんな明け方、薄闇とコインランドリー。