[No.000]

日記以上、遺書未満。

N.0425 緩やかな薄闇

 薄闇のなかを歩いている。そう思っているのは自分だけで、本当は快晴の朝、夕暮れ時、いつでもどんな場所だって歩く事が可能だった。この暗さを選んでいるのは自分自身、それなのにどうして「なにも見えない」だなんて言うのだろう。すべてはあなた次第だったのに。すべてがわたし次第であったのに。だれもいないことにしている、なにも見えないフリをしている。いつまでもそんなママゴト真面目に取り組んで、もっと楽になってしまいたかった。これもまた、楽にならないことを選択している。ぎゅっと苦しみを握りしめている。もう春なのに未だ肌寒い真夜中は人の温もりがほしかった。だれもいないことにしている、今日も。手に持つ傘はいつまでも濡れたままで、頬を伝う雨がどこか物悲しい。きっともう涙は拭えない、また決めつけてしまう、またそっちを選択してしまう。心の偏りが息苦しいよ。「死にたい」と言った彼女の横顔を想う春と夜、まだ青空はどこにも見えない。